2019(令和元)年の法語・法話

表紙

煩悩を断ぜずして 涅槃を得るなり

Without severing blind passions, they realize nirvana itself.

『顕浄土真実教行証文類』「行巻」
1月

如来誓願の薬は よく智愚の毒を 滅するなり

The medicine of the Tathagata's Vow destroys the poisons of our wisdom and foolishness.

『顕浄土真実教行証文類』「信巻」
2月

きくというは 信心をあらわす 御のりなり

To hear the Primal Vow indicates the heart that entrusts to Amida.

『一念多念文意』
3月

われらは 善人にもあらず 賢人にもあらず

We are not good persons, nor are we persons of wisdom.

『唯信鈔文意』
4月

真実の信心は かならず 名号を具す

True and real entrusting to Amida is unfailingly accompanied by saying the Name.

『顕浄土真実教行証文類』「信巻」
5月

十方の如来は 衆生を一子のごとくに 憐念す

The Tathagatas of the ten quarters compassionately regard each sentient being as their only child.

『浄土和讃』
6月

無碍の光明 信心の人を つねにてらしたもう

Unhindered light constantly illumines the person of the entrusting heart.

『尊号真像銘文』
7月

浄土真宗のならいには 念仏往生ともうすなり

The tradition of the true Pure Land teaching speaks of birth through the Nembutsu.

『一念多念文意』
8月

涅槃の真因は ただ信心をもってす

The true cause of attaining nirvana is the entrusting heart alone.

『顕浄土真実教行証文類』「信巻」
9月

わがこころよければ 往生すべしとおもうべからず

You should not think that you deserve to attain birth because you are good.

『親鸞聖人御消息』(『親鸞聖人血脈文集』)
10月

「信心」というは すなわち本願力回向の信心なり

Shinjin is the entrusting heart that is directed to beings through the power of the Primal Vow.

『顕浄土真実教行証文類』「信巻」
11月

真の知識にあうことは かたきがなかになおかたし

To encounter a true teacher is difficult even among difficult things.

『高僧和讃』
12月

信心あらんひと むなしく生死にとどまることなし

Anyone who has the entrusting heart never meaninglessly remains in the world of birth-and-death.

『一念多念文意』

2019年の法語について

科学技術の発達普及は目覚ましく、今や、パソコンやスマートフォンなどでさまざまな情報が手に入り、遠く離れた友や未だ知らない人とも即座に交流することができるという時代です。電車の中でも道を歩いていても、老いも若きもスマホやタブレットを片手にそれぞれの画面に集中している人が多く見られます。まことに便利な時代であると痛感するのですが、その反面、それらの機器を相手するばかりで、人と人との触れ合いが希薄になり、またそのような危機を通して得られる情報や対話のやり取りがどこまで本当なのか分からないという不確実な状況にあり、何をたよりとするべきか、不安の中にあるといえるでしょう。

宗祖親鸞聖人の時代は、源平合戦期から鎌倉期にかけて戦乱が多く、飢饉などの多くの自然の脅威の中にあり、厳しい時代でした。そのような中で、親鸞聖人は、「生死出づべき道」を求め、真の平穏を求めて命がけで歩まれて、自らを「煩悩具足の愚悪のもの」と厳しく見つめられ、法然上人を師と仰がれて阿弥陀如来のはたらきに出遇われ、お念仏の中に真の安寧を得られました。そして、他力のみ教えを多くのご著述にお示しくださいました。

ますます不安と混迷を深める現代社会にある私どもは、親鸞聖人のご著述を通して真実のおことばに遇わせていただき、不確実な不安の中にあっても真実に生きる道を歩ませていただくことが大事であると思われます。

2019年法語カレンダーは、宗祖親鸞聖人の心に響くお言葉をいただき、日々の生活の中でそのおこころを憶念させていただきたいと思います。