共同宣言
真宗教団連合共同宣言
親鸞聖人
来たる昭和48年は、親鸞聖人御誕生(1173)から800年、立教開宗(真宗を開かれたこと)から750年にあたる。聖人の生まれられたのは、時あたかも平安末期にあたり、時代は一つの転換期をむかえ、社会は動乱し、人びとはその帰すべきところを失い、不安と絶望にかられつつあった。
そうした時代社会のただ中にあって、聖人は、変転きわまりない自身の生涯を通し、時代の危機を転機として、新しく人間を見いだし確立することによって、この世に人間として生まれた本来の意義を全うされた。そして、そのことを見事になさしめた宗教を真宗と呼ばれたのである。
現代と真宗
科学技術のめざましい発達は、未知の世界を開き、人間生活の前に立ちはだかるさまざまな障害を取り除いて、豊かな社会を実現しつつある。しかし、人間は、この華やかな状況の中で、逆に自由を奪われ、人間らしい心を失い、かえって本当に生きる道をたずねあぐむような、新しい危機に直面しているようである。これは人間の考えを立場として人間を確立することが、不可能であることを示す事実ではなかろうか。
聖人は真宗に遇うことによって、人間の思いあがりが破れるならば、いかなる人の心の底にも流れている、本当の自分になりたいという深い願いが必ずみたされることを見いだされた。本当の人間は、他にふりまわされて自己を失うこともなく、また他を否定して内に閉じこもることもない。真理と人類のために生きる強く明るい人間である。聖人が真宗を開かれた主著「教行信証」(きょうぎょうしんしょう)は、この人間誕生の喜びと願いで貫かれている。
誕生の意義
これによって聖人は、真の宗教に遇いえた喜びと、それに先立つ人間としての誕生に、深い意義を自覚された。現代人にとってはこの自覚は、あらゆる生活に光を与え、喜びと願いに支えられた人生をもたらすであろう。
聖人の誕生によってわれわれが、この世に人間として生まれたことの意義が明らかにされるのである。そしてさらに人間に生まれたことを真に完成する宗教として、聖人が見いだされた真宗は、人類の歴史に永遠不滅の意義を持つとともに、現代の人間を救う唯一の道であるに違いない。われわれは、この確信によって、聖人の御誕生と立教開宗を現代に告げるのである。
教団の決意
今、この困難な現代社会にあって、教えによって立ち、教えを正しく伝え、ひろく人類に奉仕すべき教団の役割は、まことに重大である。われわれは心を一つにして、ともすれば閉ざされがちであった社会に対し、大きく門戸を開き、そのために人材養成・教化・研究などの機関を結合し、社会の不安と昏迷を救う教団として旧来の殻を破りつつ前進することを誓う。
ここに共同の名において、われわれの決意を内外に宣言しうることを深く喜びとする。
昭和44年4月1日
真宗教団連合
浄土真宗本願寺派
真宗大谷派
真宗高田派
真宗仏光寺派
真宗興正派
真宗木辺派
真宗出雲路派
真宗誠照寺派
真宗三門徒派
真宗山元派