共同声明・申し入れ
2024.03.28
「2024年1月30日の防衛大臣発言に強い懸念と深い憂慮を抱いています」
2024年1月30日、木原稔防衛大臣は記者会見において、宗教施設への「部隊参拝」を禁じた1974年の『防衛事務次官通達』について、「通達は50年前のもので、それ以降、信教の自由や政教分離原則に関する最高裁判例もいくつか出ている。必要に応じて改正を行うべきだ」として、この通達を見直す可能性に言及しています。しかしこの事務次官通達は、自衛官の信教の自由を担保する重要なものであり、防衛大臣の発言は、自衛官個人の内面の自由を侵害し、さらに靖国神社への部隊参拝に道を開く可能性を含んだ危険なものであると言わざるを得ません。
この防衛大臣の発言は、2024年1月9日の自衛隊による靖国神社参拝と、翌日の宮古島神社への参拝に関わってなされたものであり、この参拝に対しては、「公用車を使用していることからも公式参拝に当たるのではないか」、あるいは「靖国神社の戦前と戦後との断絶をなし崩しにするものではないか」との批判が寄せられています。
またこの度の参拝に関しては、2月13日の衆議院予算委員会で、防衛省内に「令和6年の年頭航空安全祈願の実施計画について」と題する文書が存在し、その中には「勤務員は、0740に到着殿前に集合完了」などという記述があることから、この度の参拝が計画的な部隊参拝である可能性が指摘されています。「私的参拝だった」という防衛省の弁明に疑念がもたれているのです。
いうまでもなく、靖国神社は帝国憲法下において戦争動員に大きな役割を果たしました。政府による戦争の惨禍を繰り返すまいという決意によって制定されたのが『日本国憲法』であり、戦争遂行に果たした靖国神社の大きな役割への厳しい反省によって『日本国憲法』に盛り込まれたのが「信教の自由」と「政教分離」の原則です。
一方で、私たち真宗教団においても、仏法の教えに背き、日本国家が明治以来行ってきた戦争に加担し、計り知れない惨禍を自国と他国の人々に与えてきた過去があります。私たちは、このことを深く懺悔し、念仏の道を歩むものとして、同じ過ちを繰り返さないため、非戦・平和に向けた取り組みを、追悼法要などを通して続けております。
そのような中において、この度の防衛大臣の発言が、「信教の自由」と「政教分離」の原則をなし崩しにし、靖国神社における戦前と戦後との断絶を曖昧にして、さらには靖国神社の国家護持に結び付くのではないかとの強い懸念と深い憂慮を抱いています。
2024(令和6)年3月28日
真宗教団連合 靖国問題委員会