抗議のこと(他力本願の誤用について)

謹 啓

薫風の候、貴社ますますご隆昌のこととお慶び申し上げます。

さて、真宗教団連合は親鸞聖人を宗祖と仰ぐ真宗各派の連合組織であり、真宗教義である他力念仏すなわち本願力廻向の念仏を弘める活動を行っておりますが、さる5月16日発刊の新聞に掲載されました貴社広告における「他力本願から抜けだそう」という表現について、看過できない事態であり、ここに厳重に抗議するものであります。

そもそも「他力本願」とは、親鸞聖人がお示しくださった浄土真宗の根幹をなす言葉であり、その意味は「仏の願いに生かされ力強く生き抜くこと」であります。誤って使用されることのある「他人まかせにする」意味とは全く逆であります。この言葉は、われわれ真宗教団にとってはよって立つ言葉でありますから、「他力本願から抜けだそう」という表現は、真宗教団を否定することであり、明らかにその教えをよりどころとする数多くの真宗門徒の心を踏みにじるものであります。

われわれは今回に限らず過去にも、誤用に対し厳しく抗議を行い本当の意味を申し述べてまいりました。しかしながら、今回の件が貴社をはじめとする一般社会に対し本当の意味を啓発できなかったわれわれの課題であるとも受け止めますが、その反面、影響力のある新聞広告をもって掲載されたことは、本当の意味から逸脱した誤用を助長し、すべての人間にかけられた仏の願いを否定することになります。これは単にわれわれの属する教団の存在を否定するという問題にとどまらず、混迷を深める現代社会において、人間が本来もつべき願いを覆い隠してしまうことになるからです。

よって、自分にとって宗教とは何なのかに深く思いをいたされ、貴社の誠意ある対応を求めるものであります。

合掌

平成14(2002)年5月27日

真宗教団連合
理事長 武野 以徳

真宗教団連合加盟宗派
 浄土真宗本願寺派
 真宗大谷派
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 真宗興正派
 真宗木辺派
 真宗出雲路派
 真宗誠照寺派
 真宗三門徒派
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