共同宣言

真宗教団連合結成20周年共同宣言

われわれ真宗教団連合は、宗祖親鸞聖人御誕生800年・立教開宗750年を目前にした昭和44(1969)年4月1日、「真理と人類のために生きる強く明るい人間」の誕生を願い、真宗の教法に依って生きる人間の尊厳を力強く宣言いたしました。

以後20年の歩みの中で、200万の家庭に、法語カレンダーが掲げられるようになったことは、実に大きな喜びであります。そしてわれわれは、靖国・差別の問題に具体的に取り組み、それをとおして教団の体質を自らに問い続けてまいりました。一方、情報化・国際化が急速に進む現代は、家庭や社会の基盤が大きく変動し、人間は、人生全体の向かうべき方向を見失い、人間関係はバラバラに引き裂かれて、一層混沌の度を増しつつあると言わねばなりません。あの絢爛たる唐の文化の中にあって、「タダ愁歎ノ声ヲ聞ク」と民衆の生活に深く分け入ってその悲しみの声を聞き取られた善導大師の意が現在に伝わってくる思いがいたします。この時に当たって、真宗教団連合は身を端し心を新たにして、時代を超えて貫いてきた本願念仏の伝統に根ざしつつ、21世紀に向かって歩む教団連合の基本姿勢を確認し、真宗教団連合20周年にあたり、ここに共同宣言を発表いたします。

真宗は仏教の至極である

宗祖親鸞聖人によって開顕された浄土真宗の教法は「念仏成仏是レ真宗」と言われてあるように、大乗仏教の至極であります。仏の教えは即ち仏に成る教えであります。仏は自在人、大悲の人と呼ばれる真実者−本当の人間−であります。この仏において自由と平等が同時に実現し、現に生きられているのであり、この仏の生き方にこそ 21世紀に向かって人類の歩むべき方向が明示されているのであります。

ひるがえって億うに、仏教2500年の歴史を貫いているのは縁起の法であります。真宗の教えに生きるものは、如来よりたまわる信心の智慧によってこの縁起の法に目覚め、自・他の分別を転じ、自力の計らいを破って、衆生の"いのち"の根源的連帯を現前せしめるのであります。そこに「御同行御同朋」の世界が展開するのであります。人類が今日当面している核兵器や公害の問題も、ただ「あってはならない」という倫理的要請だけでは解決できないのであって、この縁起の法に目覚めた"いのち"の根源的連帯に立ってこそ、正しい解決の道をうるのであります。

凡夫が仏に成る

21世紀に向かって歩みを進めるためには、20世紀が残した諸課題を確認しなければなりません。いまその一点を挙げれば、20世紀は1億人という膨大な人間を人間が罪の意識も無く殺した世紀でもあります。そこから「何故人間は殺し合わねば生きられないのか」、「何故人間は人類だけではなく、すべての生物を絶滅させてしまうことができる装置を作り出してしまうのか」という不可避な問いに、われわれは深い悲しみと共に対面することになります。さらに人間を直接に肯定する欲望の体系としての経済中心の社会に生きるわれわれは、かえって自ら作り出した体制に振り回されて、いのちの輝きを失いつつあります。われわれ現代人はもはや人間中心主義に立つことはできません。今こそ仏と凡夫という人間の在り方の根元的差異を明確にしなければなりません。仏陀の出現はわれらを罪悪生死の凡夫として照らし出すと共に、われらの人生に「仏へ」という方向を与えます。そして「諸ノ衆生ト共ニ」浄土に願生するその歩みにおいて、凡夫に菩薩の名(はたらき)が与えられるというこの本願力回向成就の信心にこそ、大乗仏教の至極としての浄土真宗があるのであります。

以上の確認に基づいて、われわれ真宗教団連合は次のように宣言いたします。

  • 一、われらは、願生浄土の歩みにおいて、どこまでも平和・非戦の立場を貫く。
  • 一、われらは、成仏道の歩みにおいて、「一人」の尊厳をどこまでも護りぬく。
  • 一、われらは、知恩報徳の故に、念仏の輪を世界に広げ、如来の大悲にもとづく親厚・平等な人間関係の形成に、生涯を尽くして努力する。

平成元(1989)年10月4日